こんにちは、某法律事務所にて日々投資詐欺案件に携わっています、投太郎です。
最近、円安が話題ですね。
日本経済はかつての輝きを失いつつあり、円安が進む現状に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
日本は多くの資源や食料を輸入に頼っているため、円安は食品価格やガソリン価格・電気代など生活コストを上昇させてしまう効果があり、多くの生活者にとって大きな関心事だと思います。
「このまま円安が進んで1ドル200円になるんじゃないか?」と不安に思っている方もいるかもしれません。
私自身、専門家ではありませんが、投資家として日本の経済動向や金融政策について多くの時間をかけて調べてきました。
その結果としてわかったことがあります。
それは、「理由はよくわからん」ということです。
「はあ?」と思われたかもしれませんが、実際そうなんです。
実際のところ、円安になる理由についてはさまざまな説があるんですが、完全に明確な答えを与えた人はいまだかつていません。
この記事では、それを説明していきたいと思います。
円安が起きる理由には、日本の経済状況や金融政策、国際市場の動きなど、さまざまな要因が影響していると言われています。
この章では、為替レートがどのように決まると言われているのか、その基本的なポイントを3つに分けて紹介します。
今回紹介するのは以下の3つです。
①内外金利差
②物価水準
③貿易収支
一つずつ見ていきましょう。
1-1 内外金利差について
これは、日本の金利と外国の金利に差があることから、為替が動くという考え方です。
この考え方が、一般的に報道などで話されることが多いのではないでしょうか。
金利差が大きくなると、投資家は金利の高い国に資金を移動させようとします。
例えば、アメリカの金利が日本より高ければ、日本の投資家はドルを買い、米国の資産に投資することが増えます。
金利が高いところに預けたくなるのが人の常ですよね。
これが円安・ドル高の要因になると言われています。
内外金利差で円安になった具体例
2012年末に、安倍晋三氏が日本の首相に再就任し、いわゆる「アベノミクス」と呼ばれる経済政策を導入しました。
この政策の一環として、日本銀行は積極的な金融緩和政策を実施し、日本の金利を極めて低い水準に抑えました。
一方で、同じ時期にアメリカでは連邦準備制度(FRB)が金融引き締め政策に移行し始めました。
これにより、アメリカの金利が上昇する一方で、日本の金利は極めて低いままでした。
具体的には、次のような状況がありました。
日本の金利 | 0%〜0.1% |
アメリカの金利 | 1%〜2.5% |
この金利差はヘッジファンドや機関投資家・個人投資家にとって大きな魅力となり、円を売ってドルを買い、アメリカの高金利資産に投資する動きが加速しました。
この内外金利差の拡大により、2012年末から2015年にかけて円安が急速に進みわずか3年程度で円は約40円も安くなったのです。
2012年末 | 1ドル = 約85円 |
2015年中頃 | 1ドル = 約125円 |
私たち一般市民が円安による物価高騰の影響を受けている一方で、ヘッジファンドや機関投資家は、日銀はしばらくマイナス金利政策をやめられないだろうと予測して円を売りまくり、儲けまくっていたということです。
その後、日本の金利は、2016年から2024年3月まで、日本銀行が行ったマイナス金利政策のため、非常に低い状態が維持され続けたのです。
1-2 物価水準について
商品やサービスのそれぞれの価格を集計し、社会全体の一般的な物価水準を示すために作られた一つの数値のことです。
為替レートの決定要素のうち、最も強い根拠があると言われているのが、この物価水準です。
これは、一物一価の法則という強い経済理論を背景としています。
ちょっとわかりにくいですが、要するに、同じものは世界中、同じような値段で売られるであろうという理論です。
ここでは、わかりやすくiphoneで考えてみます。
このような仕組みが働くために、財の輸出入が比較的容易に行われ、国の仕組みが近い先進国同士では、物価水準が同等となるような為替水準から、大幅に乖離しすぎることがないと考えられています。
アメリカ人はアメリカでiphoneを買うよりも日本でiphoneを買ったほうが10万円もお得なので、当然日本で買います。
その過程でアメリカ人が円を買いまくり、1ドル150円から1ドル100円へと落ち着く訳です。
物価水準で円高になった具体例
ここでは、上述のiphoneのように、円高が進んだ事例を説明します。
1980年代の日本経済は急速に成長し、世界市場での競争力を増していました。
しかし、日本の物価がアメリカや他の西側諸国に比べて低いままであったため、日本製品が非常に安価に海外市場で販売される状況が続きました。
当時、日本の家電製品(テレビ、ビデオデッキ、カメラなど)は、品質が高く価格も比較的安かったため、アメリカをはじめとする多くの国で大変人気がありました。
例えば、日本での価格は30,000円、アメリカでの価格は400ドル(1980年当時のレートは240円)、円換算すると96,000円となり、日本で購入するよりも66,000円高くなります。
この価格差が裁定取引の対象となりました。
輸入業者は日本で製品を買い付け、アメリカで高値で売ることができました。
いわゆる平行輸入というやつですね。
実際の価格ではありませんが、当時は以下のようなイメージで価格差が発生しており、アービトラージが盛んに行われ、日本の商品が世界中に輸出されていたのです。
商品名 | 日本での価格 (円) | アメリカでの価格 (ドル) | 為替レート (円/ドル) | アメリカでの価格 (円換算) | 価格差 (円) |
---|---|---|---|---|---|
テレビ | 50,000 | 500 | 240 | 120,000 | 70,000 |
ビデオデッキ | 30,000 | 400 | 240 | 96,000 | 66,000 |
カメラ | 20,000 | 300 | 240 | 72,000 | 52,000 |
自動車 | 1,500,000 | 10,000 | 240 | 2,400,000 | 900,000 |
コンピュータ | 200,000 | 1,500 | 240 | 360,000 | 160,000 |
輸出が増加することで、日本の企業は大量のドルを受け取りました。
このドルを円に交換する必要があるため、為替市場での円買い圧力が高まりました。
円買い圧力が強まると、通常は円高が進行します。
円安が進む場合は、これの逆が起きている場合と理解してもらえれば問題ないです。
1-3 貿易収支について
貿易収支とは、輸出額と輸入額の差のことです。
ある国が他国との間で行う貿易(輸出と輸入)の差額を示す指標であり、貿易収支が黒字の場合は輸出が輸入を上回り、赤字の場合は輸入が輸出を上回ります。
つまり、貿易黒字の場合、国全体として見たときに、その国は他国に対して商品を多く売っており、逆に少なく買っているということです。
一般的に貿易黒字、つまり輸出額が多くなると当該国通貨を必要とする人が多くなると考えられ、通貨高になると予想されています。
しかし、例えば米国は、非常に長い期間貿易赤字を計上しており、こうした状態が維持可能なのかどうか多くの議論がなされてきました。
2024年においては、日本円の円安は貿易収支が理由であるとの報道も多くなされます。
石油価格の高騰などによって、貿易収支の赤字幅が拡大しており、外貨、特にドルを必要としていることが背景とされています。
この点は、一見して正しい議論であるようですが、一方で、米国も大幅に貿易収支の赤字幅が拡大している点は注意が必要です。
貿易収支理論的には、米国は貿易赤字なのでドル安になるはずですからね。
貿易収支で円安になった具体例
1990年代後半、日本は貿易収支の赤字を経験することがありました。
特に、1997年から1998年にかけてのアジア通貨危機の影響で、アジア諸国との貿易において不利な状況に陥りました。
アジア通貨危機の影響で、日本の輸出先であるアジア諸国の経済が不安定になり、輸出が減少した一方で、日本は原材料や製品を多く輸入していたため、貿易収支は悪化しました。
これにより、円の供給が増加し、円安が進行し、1ドル=120円から140円程度まで下落したのです。
そして円安により、日本製品の価格が相対的に安くなり、海外市場での競争力が向上するのですが、逆に輸入コストが増加
し、輸入品の価格も上昇するので、企業のコスト負担が増加し、国内の物価は上昇(インフレ)していく傾向になります。
2 それで結局どうしたらいいのか?
今まで説明してきた通り、世界の経済がどうなるか把握することは難しく、円安になるかどうかという1点に絞ってみても、明確に予測するのは非常に難解なのです。
金利の状況は株式や為替などにも大きな影響を及ぼしますし、株式市場や為替の動向を予測するのはプロでも難しいことです。
「じゃあ、安全のために現物資産を持てばいいのでは?」と思う方もいるでしょう。
たとえば、不動産や金(ゴールド)といった選択肢です。
しかし、現物資産には次のような課題があります。
不動産 :維持費や税金がかかり、管理が大変。
金(ゴールド):保管場所や盗難のリスクを常に考えなければならない。
現物資産も万能ではなく、これだけに頼るのは現実的ではありません。
じゃあ一体どうすればいいのよ?
はい、私の結論は、インデックス投資をすることです。
その理由は以下の2つです。
インデックス投資が円安対策になる理由 | 質問の意図 |
---|---|
インデックス投資はドル建て資産への分散効果を持つから | たとえば「S&P500インデックス」は、アメリカの主要500社の株価に連動する運用を行います。 このような海外資産への投資は、ドル建て資産を持つことを意味します。 円安になるとドルの価値が相対的に高まるため、ドル建て資産を保有していると、為替の変動で資産価値が増える可能性があります。 これが、円安に対する自然なヘッジ効果となるのです。 |
世界経済全体の成長を享受できるから | インデックス投資は市場全体の動きに連動する仕組みです。 経済が成長し続ける限り、市場全体の平均は長期的には右肩上がりになる傾向があります。 たとえ円安が進行しても、インデックス投資を通じて成長する世界経済の恩恵を受けることができるのです。 |
インデックス投資の優位性は、投資界でも広く認められています。
ャールズ・エリスの名著「敗者のゲーム」では、投資をテニスの試合に例え、次のように語られています。
エリスは、テニスの試合を例に取り、 アマチュアは相手に負けるのではなく、自分のミスで自滅することが多い、と述べる。
アマチュア同士で試合をすると、プロのようにドロップショットやカ強いサープで点を取って勝つのではなく、ミスが少ないほうが勝つ。
淡々とポールを返し、相手のミスを待つのが最良の戦略だ。
投資も同じであり、市場に勝とうとしないことが一番よい方法だ。
すべての株式に投資するインデックス・ファンド(投資成果が特定の市場平均指数に連動するように連用されているファンド)を買って所有し続け、経済成長を待っことが、投資の成功法だ。
個々の株を売買すると余計な経費や高い税金がかかり、テニスで言うアンフォーストエラー(単純ミス) につながる。
(引用:チャールズ・エリス「敗者のゲーム」)
世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェットも、インデックス投資を推奨しています。
バフェットは「誰もがインデックスファンドを買うべきだ」と語っており、投資の世界ではすでに「結論済み」とも言える方法です。
ぜひインデックス投資を検討してみてくださいね。
3 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の結論としては、「今後の経済や円安の行方を正確に予測するのは非常に難しい」ということでした。
それでも、資産を守るための対策として、何かしらのヒントになれば幸いです。
もちろん私もインデックス投資をしています。
個人的に納得できるヘッジファンドへの投資もしていますが、まあ、インデックス投資だけでも十分だと思います。
他にも、いろんな投資に対して私なりの見解を述べている記事もありますので、興味があれば読んでみてください。
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