こんにちは、某法律事務所にて日々投資詐欺案件に携わっています、投太郎です。
いつもは詐欺や投資に関する話題が中心なんですが、今回はちょっと趣向を変えて、ヘッジファンドに関わりのある人物の紹介をしてみようと思います。
「メモ的な感じ」でいろいろな人物をまとめていく予定なので、興味があればぜひ覗いてみてください。
今回ご紹介するのは、イギリスのリシ・スナク首相です。
スナク首相は、2022年10月25日にイギリスの第79代首相に就任しました。
この就任、実は英国の歴史においていろいろと異例づくしなんですよ。
例えば、
・最年少の42歳という若さで首相となったこと
・初のアジア系であること
・ヒンドゥー教徒であるということ
・政治経験がわずか7年であることなど
などなど、ちょっと驚きの肩書きが並んでいます。
さらに注目したいのは、彼のこれまでのキャリア。
リシ・スナク氏は若くしてヘッジファンド業界で大きな成功を収めていて、その経済センスは政界に入る前から注目の的でした。
こうした経験が、今後のイギリスの舵取りにもどんな風に生かされるのか期待されているんですよね。
今回は、そんな異色の経歴を持つリシ・スナク首相の魅力に迫っていきたいと思います。
リシ・スナク首相は1980年生まれ。
インド系で、アフリカ出身の家庭に育ちました。
英国のエリート街道を歩んできた彼の経歴は、まさに「成功者の道のり」といった感じです。
まず、彼は名門校ウィンチェスター・カレッジを卒業。
その後、オックスフォード大学でPPE(政治・哲学・経済学)を専攻しました。
このPPE、実はイギリスのエリート養成コースとして有名で、多くの首相や大企業のCEOを輩出してきたプログラムなんです。
デーヴィッド・キャメロン元首相などもここ出身なんですよ。
オックスフォード卒業後、スナク氏はゴールドマンサックス証券に入社。
ここでは、アナリストとして鉄道やメディア関連の米国株を担当し、約3年間働きました。
その後退職し、フルブライト奨学金を得てスタンフォード大学でMBAを取得。
この奨学金はアメリカで最も名誉あるものの一つで、エリート中のエリートしか受けられません。
MBA取得後は、ヘッジファンド業界へ。
まずは、世界的に有名なアクティビストファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド」で働き、さらにスタートアップの「テレメ・パートナーズ」でパートナーを務めるなど、ビジネスの最前線で活躍しました。
その後、35歳で政界に転身。
保守党から出馬し、ノースヨークシャー州リッチモンドの下院議員となります。
そこからの彼の昇進スピードは目を見張るものがあり、39歳の若さでボリス・ジョンソン政権下の財務大臣に抜擢。
そして2022年、42歳という史上最年少で英国首相の座に就きました。
スナク首相は「ヘッジファンド出身の首相」や「歴史上最も裕福な首相」としても注目されています。
一体どんな仕事をしてきたのか、彼のキャリアをちょっと紹介していきます。
リシ・スナク首相がかつて働いていた「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド」(TCI)は、2003年にクリストファー・ホーンによって設立された英国のヘッジファンド運用会社です。
このファンドは、企業価値を高めるために投資先企業の経営陣に積極的に提言を行う「アクティビストファンド」として知られています。
日本で言えば、村上ファンドがアクティビストファンドの代表例として挙げられますね。
以下に概要をまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
社名 | The Children’s Investment (ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド) |
創業年 | 2003年 |
創設者 | クリストファー・ホーン |
ファンドマネージャー | クリストファー・ホーン |
本社所在地 | イギリス ロンドン |
運用資産総額(AUM) | 約420億ドル |
主な投資戦略 | アクティビスト投資 |
年平均リターン | 18%前後 |
ロックアップ期間 | 3~5年 |
主要な投資分野 | グローバル株式市場 |
最小投資額 | 1000万ドル |
運用ファンド | TCI Fund I – IV (ティーシーアイ・ファンド・ワン・スリー・フォー) TCI Real Estate Partners Lending Funds (ティーシーアイ・リアル・エステート・パートナーズ・レンディング・ファンズ) |
注目すべき実績または事例 | TCIは、ドイツ取引所やオランダのABN AMRO銀行などへの投資で注目されました。 特に、ABN AMROの分割と売却を主導し、大きな話題となりました。 2022年にはアルファベット(Googleの親会社)のCEOに対してコスト削減を求める公開書簡を送っています。 |
公式サイト | The Children’s Investment(ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド)の公式サイト |
スナク氏がTCIで携わった仕事の中で特に有名なのが、米国鉄道会社「CSXコーポレーション」を巡る案件です。
このプロジェクトでは、TCIが3Gキャピタル・パートナーズと協力してCSXの株式を約20%取得しました。
その上で、経営改善を目的に、自社株買いの実施や取締役選出を求める株主提案を行ったのです。
しかし、この動きに対してCSX側は反発。
TCIがトータル・リターン・スワップという金融デリバティブを利用して実際の保有株式を隠蔽していたと主張し、大量保有報告制度違反で訴訟を起こしました。
この裁判は注目を集めましたが、最終的にTCIと3Gキャピタル・パートナーズが勝訴。
しかし、この判決は結果的に大量保有報告制度の形骸化を招き、金融市場全体に大きな影響を与えたとも言われています。
その後、CSXの株価はリーマンショックの影響で大幅に下落。このプロジェクト自体で大規模な利益を得ることはできませんでしたが、スナク氏の金融市場での手腕と経験は評価されています。
この案件を経てスナク氏はTCIを退職し、パトリック・デゴースとともに「テレメ・パートナーズ」を設立しました。
ここでも投資業界での経験を活かし、新たな挑戦を続けています。
スナク首相がTCIで得た年収や報酬の詳細は公開されていませんが、彼が20代の時点で資産200万ドル(約3億円)を超えるマルチミリオネアだったことは知られています。
当時、TCIはわずか20人のメンバーで年間5億6千万ポンドもの収益を上げており、スナク氏も高額の報酬を得ていたと推測されます。
現在、スナク一家の資産総額は8億1000万ドル(約1200億円)とされ、英国内で222番目の資産家にランクイン。
これは英国王室の資産をも上回る規模です。
その大部分は妻であるアクシャタ・マーシーが父から譲り受けた「インフォシス」の株式(約7億1500万ドル)によるものですが、スナク氏自身も多額の資産を築いてきました。
スナク首相がヘッジファンド業界で培った経験と実績は、彼の政治家としての手腕にも大きく影響を与えています。
金融市場での激しい競争を経て、どのように政界での舵取りを行っているのか、今後も注目ですね。
また、クリストファー・ホーン氏の活動やTCIの他の案件についても非常に興味深いので、興味がある方は以下記事も読んでみてください。
【2024年版】ヘッジファンド世界ランキングTOP10!世界が認めた投資の巨人たち!2 完璧すぎるスナク首相
リシ・スナク首相といえば、その洗練された見た目や行動がよく話題になります。
高級ブランドのプラダの靴を履き、清潔感のある髪型に、身体にフィットした高品質なスーツ姿。
さらに、理路整然としたスピーチと明快なメッセージを好むことでも知られています。
そのスタイルは、前任者のボリス・ジョンソン氏とまるで対照的です。
ジョンソン氏といえば、ぼさぼさの髪型にラフな印象が特徴的でしたが、スナク氏はどこを見ても「きっちりとしたエリート」といった雰囲気を醸し出しています。
ただ、この「完璧なスタイル」が批判を招くこともあります。
たとえば、2022年の党首選では、前首相のリズ・トラス氏と争いました。
その際、スナク氏はディベートでトラス氏を論破したものの、「エリートらしさ」が逆に反感を買い、庶民的なトラス氏に支持が流れる結果となり敗北しています。
また、私生活や行動が批判の的になることも。
たとえば、妻が保有するインドIT大手「インフォシス」の株を通じた租税回避疑惑では、守勢に回る場面もありました。
さらに、建設現場を訪れた際に高級ブランドの靴を履いていたことが「庶民感覚がない」と指摘されたこともあります。
スナク首相の経歴やスタイルは、確かにエリートそのものです。
しかし、この「庶民とは遠いイメージ」が、彼の政治的な手腕や国民への共感力にどのような影響を及ぼすのか、不安視する声があるのも事実です。
一方で、彼の理論的で整然としたアプローチや、金融や経済に強いバックグラウンドは、危機的状況にある英国経済を立て直す上での大きな武器になるとも期待されています。
3 スナク首相の就任でイギリスはどう変わる?
スナク政権が誕生した背景は、ボリス・ジョンソン元首相、そしてリズ・トラス前首相の後任であることが非常に重要です。
この流れを理解することで、現在のイギリスが直面している課題とスナク政権の期待が見えてきます。
ボリス・ジョンソン氏は英国国民に非常に人気のある政治家で、ジャーナリスト時代からEU懐疑派として活躍していました。
政治家としても、EU離脱(ブレグジット)を進めた立役者の一人です。
首相在任中にはEU離脱問題を前進させる成果を挙げたものの、不祥事が相次ぎ、政権の座を退くことになりました。
リズ・トラス氏は、新自由主義的な思想を掲げ、サッチャー元首相を彷彿とさせる政治スタイルを打ち出しました。
その一環で「ミニ・バジェット」と呼ばれる450億ポンド規模の減税計画を発表しましたが、これは結果的に金融市場を混乱に陥れることに。
インフレ環境下での大規模な財政緩和策により国債金利が急上昇し、ポンドも急落。
批判を受け、わずか44日間で辞任するという短命政権に終わりました。
ちなみに、「トラス氏が辞任するまでにレタスの賞味期限が切れる方が早い」と揶揄されたエピソードも話題になりましたよね。
そんな混乱の中で誕生したのが、スナク政権です。
スナク首相は現在のイギリスが抱えるいくつもの課題、特に経済の再建を最優先課題としています。
具体的には、インフレの高騰や金融市場の混乱への対処として、増税と歳出削減を含む財政健全化の方針を打ち出しています。
しかし、ロシア・ウクライナ問題によるエネルギー不足が英国経済をさらに圧迫しており、当面は厳しい経済状況が続くことが予想されます。
このため、短期的な経済停滞をある程度容認しつつ、長期的な財政再建を目指す政策運営が必要となるでしょう。
さらに、EU離脱問題も引き続き課題です。
特に北アイルランドとの国境問題や、移民受け入れの減少に伴う労働力不足が経済に悪影響を与えています。
これらの問題をどう解決するか、スナク政権の手腕が問われています。
外交面では、スナク首相は中国への強硬姿勢を継続する意向を示しており、米国の対中政策と足並みをそろえています。
このため、欧州寄りというよりも親米的な路線が予想されています。
日本では、スナク首相が42歳という若さで首相に就任したことが注目されています。
しかし、過去にはデーヴィッド・キャメロン氏が43歳、
トニー・ブレア氏が44歳で首相になっていますので、特別若すぎるというわけではありません。
ただし、スナク首相の政治家としての経験は7年、閣僚としてはわずか2年と、キャメロン氏やブレア氏と比べてやや短いのは事実です。
この点を補うリーダーシップが期待されています。
スナク首相には、特に金融業界で培った経験を活かし、経済再建に適切な政策を打ち出すことが期待されています。
経済・金融の専門知識を持つ彼が、混乱の続く英国をどのように立て直していくのか、国内外から注目が集まっています。
混乱の続く英国を背負う若き首相リシ・スナク。
そのリーダーシップが試される局面が続きそうです。
4 今回のまとめ
いかがでしたでしょうか。
イギリスでは、金融市場が成熟していることもあり、金融業界出身の政治家はそれほど珍しい存在ではありません。
しかし、スナク首相は英国史上初の「ヘッジファンド出身」の首相という点で際立っています。
このような経歴を持つスナク首相には、特に経済政策への期待が寄せられています。
金融業界で培った実績をどう活かし、混迷する英国経済を再建していくのか、多くの人々が注目しています。
一方で、政治家としての経験が比較的浅いこともあり、その手腕については未知数な部分が多いのも事実です。
今後、若き首相がどのような政策でイギリスという困難な環境にある大国を導いていくのか、世界が注視しています。
スナク首相が勤務していたヘッジファンドについて書いてある記事もありますので、興味がある方はみてください。
【2024年決定版】国内/海外ヘッジファンドおすすめランキング1~10位を一挙公開!